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「大会開幕100日前イベント」で、パラ陸上の多彩な魅力を間近に体感!

神戸2024 世界パラ陸上競技選手権大会が2月7日に開幕まであと100日を迎えた記念と大会機運の一層の醸成を目的に「大会開幕100日前イベント」を2月12日に神戸市の神戸三宮センター街で開催しました。神戸大会出場を目指す現役のパラアスリート4名をゲストに迎え、パラ陸上の魅力を間近に体感してもらえるよう、競技のデモンストレーションランやトークショーなどを行いました。

■想像を超えるスピードと躍動感

3連休最終日、大勢の買い物客や観光客で賑わうストリートに特設された陸上用タータントラックで、デモンストレーションランを披露してくれたのは、大会アンバサダーも務める山本篤選手に、稲垣克明選手、近藤元選手の義足アスリート3名と地元、兵庫県三田市出身の車いすランナー、北浦春香選手です。手を伸ばせば届きそうな距離での渾身の疾走に、観客からは感嘆の声がもれ聞こえました。

特設された陸上用タータントラックを駆け抜ける山本篤選手

5月の本大会でも活躍が期待される稲垣克明選手。

さらに、大会組織委員会の増田明美会長と兵庫県小野市出身の大会アンバサダー、小林祐梨子さんも実況解説で盛り上げました。例えば、競技用義足について、「速く走るためのデザイン」「オーダーメイドなのでとても高価」「義足を作る職人さんとの信頼関係も重要」といったトリビアが次々と語られ、「レーサー」と呼ばれる競技用車いすについても、「自転車に似てスタート時は重く、スピードに乗るまでが大変」「こぐというより、専用のグローブを着けて叩くように車輪を回す」「日本製は性能が高い」など耳寄りな情報が満載でした。

デモンストレーションランを終えた山本選手が、「これだけ多くのお客さんのなかを、こんな近い距離で走ったのは初めて。ワクワクして楽しかった」という感想を話すと、他の3名も大きくうなずいていました。

増田会長(左)と、小林祐梨子さん(右)

■素顔がのぞくトークショー

つづいて行われたトークショーではMCの西田育弘さんをはじめ、増田会長や小林さんからもさまざまな質問が投げかけられ、アスリートそれぞれの魅力がどんどん引き出されていきます。「パラ陸上との出合いは?」という問いには選手それぞれ、事故や病気などをきっかけに競技用義足や恩人との出合いがあり、パラ陸上につながった様子や、陸上競技がそれぞれに新たな世界や可能性を広げてくれた実体験が生き生きと語られました。

トークショーで意気込みを語る北浦春香選手

パラ陸上の魅力について、北浦選手は、「さまざまな障害のある選手が『クラス別』に競い合い、それぞれの選手が自分の限界を超えていく努力をしている姿を見てほしいし、かっこいいスポーツとして感じてほしい。私もかっこよくなりたいと思って走っています」とアピール。北浦選手自身は脳原性まひにより手足にまひがあり、車いすを使うT34クラスで競技して10年以上。今は100mと800mを専門としています。

センター街を疾走する北浦選手。杭州2022アジアパラ競技大会 女子100m,800m銀メダルのスピードで観客を魅了。

山本選手、稲垣選手、近藤選手はともにT63(片大腿義足)クラスの選手で、専門種目も100m走と走り幅跳びと全く同じ、合宿をともにすることもあるそうです。競技歴は順に約20年、5年、2年と異なりますが、山本選手は、「僕たちはライバル同士でもある。今日は一人ずつ走ったが、神戸大会の100m決勝ではもしかしたら3人が競走するかもしれません。ぜひ楽しみにしてください!」とPRしました。

■力強いパフォーマンスの陰で

選手は一見、簡単そうに走っていますが、実は難しさもあります。例えば、T63の選手の義足には膝の代わりをする部品、「膝継ぎ手」がついていますが、操作を誤ると「ひざ折れ」が起こって転倒する危険性も高く、近藤選手は、「気を緩ませたら、こけてしまう。その怖さを知ることが競技の第一歩で、恐怖感を練習で少しずつ減らしていくことが速くなるには不可欠。僕にはまだ怖さがあるが、乗り越えなければと練習している」と明かしました。

杭州2022アジアパラ競技大会で走り幅跳び金メダル(T63)を獲得した近藤元選手。アスリートとしてさらなる高みを目指す。

北浦選手は、「私もレーサーでレーンの真ん中をまっすぐに走れるようになるまで3年くらいかかった。レーンを踏むと失格になるので、そこが最初の難しさだった」と振り返りました。
増田会長は、「選手は失ったものを数えるのでなく、今あるものをどのように使えば、最大限のパフォーマンスができるかを日々研究し努力しています。そんな選手にとって世界選手権はハレの舞台。ぜひ、応援してください」と大会をPR。
応援方法について山本選手は、「100mなど走る種目ではスタートだけシーンとして、ピストルが鳴ったら、ワーッと声を出してもらえれば、選手は最高の気分でいつも以上の力が出る」と話し、走り幅跳びでは「手拍子をお願いします。いい記録が出たら一緒に喜んでほしいし、ファウルの場合はア~ってため息をついても大丈夫。選手にはかえっていい刺激になります」と、少し意外な応援ポイントも教えてくれました。

■多彩な見どころ

世界100の国と地域から約1,300選手が集う神戸大会ではハイレベルなパフォーマンスが期待されますが、選手それぞれも見どころを紹介。北浦選手は、「短距離レースはスタートからゴールまで失敗ができないし、息も止まりそうなほど追い込みながら、駆け引きもしています。追いつき追い越せるのかといった面白さも」と話せば、稲垣選手は、「義足の選手はそれぞれ切断した脚の長さや体格なども異なるため速く走るための義足の動かし方に工夫があり、フォームもそれぞれ異なります」と注目ポイントを挙げました。
山本選手は、「走り幅跳びの踏み切りの瞬間、義足には体重の10倍もの重さがかかって大きくたわむ。たわんだ義足が元に戻る反発力で選手が空中に飛びだしていく迫力をぜひ!」と力を込め、近藤選手は、「スタートでは篤さんに負けてしまうが、そこから追い上げていくスピードをみてほしい」と話し、走り幅跳びでも山本選手の持つ日本記録(6m75)を「いつか越えたい」と意気込みを口にしました。

小林さんは、「選手それぞれの背景を知れば知るほど興味がわくし、引きつけられます。生観戦は画面越しとはまた違う高揚感に包まれると思います」と大会本番に思いをはせていました。
トークショーの後には、神戸市在住の人気アーティスト、NONAME’Sがライブパフォーマンスで選手にエールを送り、ステージイベントの最後には増田会長が再び登壇。5月に開幕する本大会に向け、「競技レベルも高く、選手も個性的。“パラ陸上祭り”をみんなで楽しみましょう!」と観客に熱く呼びかけました。

 

なお、イベント会場内には日常用義足や競技用車いす(レーサー)を体験できるブースや選手に応援メッセージを書き込める神戸大会フラッグも用意され、大勢の方に参加いただきました。大阪市の50代男性は義足での歩行を体験し、「義足に体重をかけることには大きな恐怖感があり、この怖さを乗り越えて走る義足選手のすごさを実感しました。神戸大会では練習の成果を思い切り発揮してください」と選手にエール。また、レーサーを体験した尼崎市在住の小学生の兄妹は、「かっこいいし、面白かった」と笑顔。パラリンピックについても「障害のある選手の大会」と知っていて、応援フラッグにも「がんばって!」とメッセージを仲良く書き込んでくれました。

フラッグにパラアスリートへの応援を書き込む親子。ことし5月、この”声援”を背にアスリートたちが勇姿を見せる

競技用車いす(レーサー)体験の様子。

神戸大会は5月17日に開幕し、25日まで神戸市のユニバー記念競技場で開催。観戦チケットも好評販売中です。
(詳しくはこちら⇒https://kobe2022wpac.org/ticket-information/)

 

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