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いこいの場がつなぐパラスポーツの輪 神戸・しあわせの村

●川田誉史子氏のインタビュー動画(5:17)

神戸市北区の「しあわせの村」は、世代や障がいの有無を超えて、交流し楽しむことができる“総合福祉ゾーン”。205ヘクタールの広大なエリアに福祉施設や各種スポーツ施設、宿泊・温泉施設などが点在しており、週末には広場で多くの家族がスポーツやレクリエーションを楽しむ。神戸市民にとっては憩いの場所だ。
一方で、神戸のパラスポーツの拠点でもあり、パラアスリートや障がい者にとって大切なフィールドでもある。
「しあわせの村」の管理・運営を担っている「こうべ市民福祉振興協会」常務理事の川田誉史子さんに、“開村35周年”にあたる2024年の開催に向けて調整が進む「世界パラ陸上競技選手権大会」への期待を聞いた。

芝生が広がる園内

広々とした芝生広場は、ピクニックやレクリエーションに最適【提供:こうべ市民福祉振興協会】

―改めて、「しあわせの村」についておしえてください

1989年(平成元年)に、神戸市制100周年を記念してつくられた公園です。
甲子園球場50個分の広さで花と緑あふれる公園の中に、医療や福祉施設が11施設。それ以外で27と計38施設あるんですけど、それが本当に子供から大人まで、お年寄り、障がい者の方、みんなが楽しめるところです。

―開村から今年(2022年)で33周年となりますが、その歩みは神戸のパラスポーツを支えてきた歴史でもありますね。

しあわせの村ができたその年に、アジア太平洋地域のパラスポーツの国際大会である「フェスピック」が神戸で開かれました。そのメイン会場に選ばれたのが、しあわせの村でした。このため、スポーツ施設や宿泊施設などのハードは、初めから障がい者の方が利用できるように整備されていました。
それ以降ずっと、障害のある方も含めて、スポーツ関連のイベントやスポーツ教室や交流イベントをたくさん実施してきました。

アーチェリーを競うパラ選手たち

1989年の「フェスピック神戸大会」ではメイン会場としてアジア太平洋地域ののパラアスリートを迎え入れた。【提供:こうべ市民福祉振興協会】

―東京オリンピック・パラリンピックでアスリートたちが駆け抜けた国立競技場と同じトラックが整備されているそうですね。

老朽化が進んでいたこともありますので、30周年を迎えたタイミングで改修工事も行いました。東京パラリンピックや世界パラ陸上の事前練習等に使ってもらおうということで、多目的運動広場のトラックや体育館の改修工事を行いました。
この陸上トラックは、今の国立競技場と同じ素材の高速トラックを使っています。日本では「国立競技場」と「しあわせの村」だけなんです。とても走りやすく、高反発でスピードが出ると言われています。
体育館も車いすバスケ等をしやすいように、専用の素材を使い、ハード面のグレードアップをしています。

陸上トラック

多目的広場の陸上トラックは東京・国立競技場と同じ素材を使用。アスリートも市民も気軽に”高速トラック”を楽しめる。【提供:こうべ市民福祉振興協会】

―障がい者や高齢者、市民の人々が楽しめるオススメの遊び方もあるんですよね

駐車料金は障害者手帳をお持ちの方は無料、また18歳以下のお子様とご一緒であれば無料になります。温泉施設やキャンプ施設といったほとんどの施設の料金は障がい者と65歳以上の方は概ね半分になります。公園に入るのは無料ですし、本当に安くていろんな遊びができます。スポーツ施設やテニスコート、レンタサイクルなど、低料金もしくは無料で遊んでいただけるものが多いです。
春には桜のライトアップも楽しめる本格的な日本庭園もあります。人気のトリム園地には春に「ふわふわドーム」が完成します。

―定期的にパラスポーツの体験イベントもされています。東京パラリンピックの前と後で意識の変化は感じますか?

パラリンピックの開催の影響は大きかったですね。毎年11月に、誰でも参加できるパラスポーツの体験イベントとして「パラスポーツ王国HYOGO&KOBE」を開催していますが、東京パラリンピック後の去年の11月の時は、(パラリンピック前の)一昨年と比べると、参加者数が大きく増えました。以前は「しあわせの村に遊びに来たら偶然パラスポーツのイベントをしていて、参加してみようかな」という感じでしたが、パラリンピックをテレビなどで見て、「あの競技がしたい!」とご家族連れで来られた方も多く、すごく盛り上がりました。

車イスバスケットを楽しむ人たち

去年秋に開かれた「パラスポーツ王国HYOGO&KOBE」では多くの市民がパラスポーツに親しんだ。【提供:こうべ市民福祉振興協会】

―2024年に神戸で、世界パラ陸上が開かれる予定です(現在調整中)。しあわせの村の開村35周年の節目とも重なるわけですが、どんな大会になってほしいですか?

市民の方が、「楽しそう!」とか「自分もやってみたい」という気持ちに変わってきているのを感じています。神戸にパラ陸上のトップアスリートが集まるということなので、大会を通じて身近に感じてもらってたくさんの人に応援してほしいです。フェスピックの時のように、ボランティアにも参加してもらいたいです。そして障害のある人もない人も、もっと沢山の人に「自分もパラスポーツをやりたい」という気持ちになってほしいです。
事前の練習や合宿で使ってもらうことで「しあわせの村」も一緒にパラアスリートを応援していきたいと思います。

インタビューに答える女性

こうべ市民福祉振興協会・常務理事の川田誉史子氏

しあわせの村 ホームページ

放送/ラジオ関西「PUSH!」2022年1月26日OA
インタビュアー/津田明日香(ラジオ関西アナウンサー)

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