観る

ジャンプでみんなの心をつなぎたい オリ・パラ選手が鉄人のまちで弧を描く

走り高跳びや走り幅跳びといった跳躍競技の魅力をより知ってもらおうと、日本陸上跳躍界のトップ選手らがこの夏から活動を開始した。10月には大阪で跳躍競技の公認記録会を開催。そして続いての活動の地として選んだのが、来年「世界パラ陸上競技選手権大会」が開かれる神戸の街。
神戸市長田区の鉄人広場で、東京大会に出場したオリンピアン・パラリンピアンが共演し地元高校生アスリートと跳躍を繰り広げる。「鉄人28号に向かってオリ・パラの選手が大ジャンプ!」――。
中心メンバーである東京オリンピック男子走り高跳び日本代表の衛藤昂選手、女子走り幅跳びの日本高校記録を持つ神戸出身の中野瞳選手に、活動のきっかけ、来年に迫った神戸大会への期待を聞いた。

微笑む2人

一般社団法人「Jump Festival」の代表理事を務める衛藤昂選手(左)と、中野瞳選手(右)

―お二人は今年8月、一般社団法人Jump Festivalを立ち上げられました。どのような団体なんですか。

衛藤 跳躍競技、陸上競技の“あったらいいな”・“こういうイベントあったらいいな”という思いを実現していく団体です。

―「あったらいいな」といいますと?

中野 例えば、今年で言うとコロナで試合がたくさんなくなってしまったので、選手の間では「公認記録を残せる大会があったらいいな」という声が多かったんです。そこで10月に私達が主催となって大阪で跳躍競技だけの公認大会を開きました。そういった選手・コーチの声を集めて、1人では実現できないけど、団体だからできることをみんなで実現する団体です。

―現役選手が試合を実現していくというのは今までにない取り組みだと思います。活動の中で、「跳躍競技をエンターテイメント性が高い」という点に着目されているのも特徴ですね。

衛藤 走り高跳びも棒高跳も、バーがあって、それを超えたらクリアで、落としてしまうと駄目というわかりやすい単純明快なルールです。小学生のお子さんでもわかる、そんな簡単なルールの中、ギリギリのところを攻めていくっていうところは、見ていて面白い部分じゃないかなと思ってます。

中野 跳躍はスタートも自分たちで決めることができます。観客と一緒に空気感をつくって跳ぶことができるので、そこはコンサートと一緒かもしれません。

―お客さんの盛り上がりが記録を左右するんですね。私たちの拍手が1センチ記録が延びることにつながっている???

衛藤 それは間違いなくあります。雰囲気によって選手のモチベーションも記録も大きく変わります。ただまだ選手の方が観客を巻き込む力が弱いと思いますし、観る側もどう応援したらいいかわからないというのもあると思います。そこを、活動を通じて変えていきたいですね。

走高跳の跳躍

走高跳で跳躍する衛藤昂選手(写真提供:一般社団法人Jump Festival)

中野 実際、競技場では私たち選手が跳ぶところと、客席が50メートル以上離れているのでなかなか伝わりにくいのですが、息遣いや踏切の音などが聞こえるくらい間近で跳躍を観てもらうことで、跳躍競技の魅力を知ってほしいと思っています。

―今月14日のイベント「JUMP FESTIVAL in KOBE」では、衛藤選手や東京パラリンピック代表の鈴木徹選手による高跳びの試技、トークショーのほか、高校生の競技会などが予定されています。会場が、神戸新長田の鉄人28号の前、ということで、競技場でなく街中で開くのがユニークですね。

中野 みなさんに「競技場にきて応援してください」という前に、マットもバーもオールウェザーも全部持ってきてみなさんの前で跳ぼうということで企画しました。

―自分の目線が選手と同じ目線で、その跳ぶ高さを見れるというのは今まで経験したことがない体験です。ちなみに衛藤選手は記録は2m30センチで、ちょうどこの(インタビューのスタジオの)天井の高さなんですよね。これを跳び越える様子を間近で見られるというのは、オリンピックとも違う興奮がありますね。

衛藤 跳ぶ側もとても楽しみにしています。

―みなさんの活動をきっかけに、競技場に応援にいく人が増えてほしいですね

中野 日本だと陸上大会は家族や関係者の応援にいくイメージですが、海外だと、陸上大会が平日に開かれることも多く、仕事帰りにとか、デートで陸上大会を観に行くこともあるんです。日本でも跳躍競技がそれくらい身近なものになるようになればと思います。

―来年には神戸2022世界パラ陸上競技選手権大会も開かれます。

中野 神戸で生まれて神戸で育ちました。ですので神戸大会の存在をもっと知ってほしいです。14日のイベントでは義足の体験会も行います。テレビで見ているだけでは、競技用の義足がどんなものなのかわからないですよね。実際に体験することでパラ陸上について知ってもらいたいです。神戸大会が素敵な大会になるよう、自分たちも活動を通じて力になりたいと思います。

衛藤 自分たちの活動や大会を通じて、神戸の街が、する側も観る側も垣根が低い跳躍競技の盛んな街、跳躍競技が溶け込んだ街になってほしいです。

走り幅跳びで跳躍する女性選手

走り幅跳びで跳躍する中野瞳選手(写真提供:一般社団法人Jump Festival)

―今回のイベントのテーマも「ジャンプでつなぐ東京から神戸」ですね

中野 今回のイベントを通じて、ジャンプで繋ぎたいものが3つあります。まずは東京2020オリンピック・パラリンピックから、来年の神戸2022世界パラ陸上競技選手権大会。そこをジャンプでまずは繋ぎたいです。そして二つ目は、今回、走り高跳びのエキシビションマッチに地元の高校生のトップアスリートを招待しているので、高校生とオリンピック選手パラリンピック選手をジャンプで繋ぎたい。そして三つ目は街のみんなの心をジャンプで繋げたいです。

―これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

<プロフィール>
衛藤昂(えとう・たかし)
三重県出身。味の素AGF所属。オリンピックには男子走り高跳びの日本代表として、リオデジャネイロ大会(2016)と東京大会(2021)に出場。自己ベストは2メートル30。ヨーロッパ遠征で知り合っていた中野瞳らに声をかけて一般社団法人Jump Festivalを立ち上げ。同法人代表理事。

中野瞳(なかの・ひとみ)
兵庫県神戸市生まれ。つくば分析センター所属。長田高校在学中の2007年に走り幅跳びで当時の日本ジュニア記録を更新する6m44を記録。一般社団法人Jump Festival代表理事。

放送/ラジオ関西「078Radio」2021年11月7日・14日OA
インタビュアー/ケーちゃん、藤井祥平

※2021年11月14日のJUMP FESTIVAL in KOBEの詳細は、一般社団法人Jump FestivalのHPをご確認ください

※掲載情報は2021年11月11日現在の情報です

VIEW ALL